電通事件と、働き方改革

当塾では、
中高年サラリーマンに目覚めて頂き
「最大限の自分自身を生きる人」に
近づけるヒント・情報を
それこそ様々な切り口で提供しております。

本日のテーマは
「長時間労働・働き方改革」に関して
私なりの意見を述べたいと思います。


【1.電通でまた起きた過労自殺事件】 

2015年12月に広告会社最大手の
通の新入社員で、東大卒の
高橋まつりさん(当時24歳)が
過労自殺し労災認定されたのが
2016年9月30日でした。
 
2週間後の10月14日には
労働基準監督署による
「臨検監督」という
任意立入り捜査が
電通本社にされました。
 
2016年11月7日には
電通の本社や関西支社などに
労働基準監督官ら
総勢88名による
一斉家宅捜査がありました。
 
捜査は異例の速さと、
過去にない規模で
行われています。
今回は
「過重労働撲滅特別対策班」
が動いているそうです。
 
電通では過去にも
過労自殺者がでて
労働環境改善を国に
誓った・・・はずでした。
 
1991年に入社2年目の
24歳男性社員が過労自殺。
遺族側と最高裁まで争われ
2000年、電通側に責任が
あると認定されています。
 
結果、国に対して残業実態
の改善を約束させられています。
 
にもかかわらず、それ以降も
残業実態に改善が見られない
と、何度も「是正勧告」
を電通は受けていたのです。
 
そしてとうとう、
犠牲者がまたでました。
若くて、優秀な女性でした。
 
つまり、度重なる厚生労働省の
指導にも拘わらず、
電通の過酷なまでの残業実態は
全く変わらなかったのです。
 
日本国政府は今、
働き方改革実現会議で
生産性向上の議論を進めており、
今回の焦点である
長時間労働の是正も
大きなテーマの一つです。
 
厚生労働省や労基署は本気です。
いや本気を通り越して、
激怒しているでしょう。
 
今回の電通事件に対し
塩崎恭久厚生労働大臣は、
「徹底的に究明する」と
非常に強い姿勢で臨んでいます。
 
 電通の労働基準法に抵触する
長時間労働を巡る今回の事件は、
日本企業が今抱えている病根や、
「働き方」に関する因習とも
いうべき実態を浮かび上がらせました。
 
中高年サラリーマンの皆さんにも
無縁の話ではありませんよね。

 

【2.電通への処分】   

それにしても電通の残業時間は
異常なレベルですね。

今回の一斉捜査が入ったことで
何とか改善しようとした結果、
本店の一斉消灯時刻は22時
に設定されたとTVで報道されました。
 
しかも、22時でも
電通の社員はまだ大勢残っていて、
一斉消灯になると会社の出口に
殺到するというではありませんか。
 
9時始業~17時までが
営業時間として、
22時まで会社で働けば
単純に残業時間は1日で
5時間となります。
 
もちろん、昼休み(1時間として)を
考慮した結果、労働基準法が定める
週40時間を超える法定外残業時間
はもっと短いはず・・・
 
それでも、22時まで残業すると
法定外残業は18時以降で
1日4時間カウントされます。
 
電通が週休二日制として、
1か月の営業稼働日が
平均21日間としましょう。
 
毎日22時まで残業すると
1ヶ月間で法定外残業は
4時間/日×21日=84時間
 
となり、これはもう過労で
倒れる労働時間量レベルに
軽く達します。危険です。
 
過労自殺した
高橋まつりさんの残業実態は
これよりまだひどかったことが
報道では言われていますしね・・・。
 
また、上記の計算はあくまで
単純計算であり、電通関係者からは
「それは実態とは異なる」
「全部の部署がそうではない」
「そこまでひどくはない。」
との反論もありましょう。
 
ちなみに、日経新聞には
「電通は(2016年12月)2日、
(中略)労働環境の改善策を
発表した。2017年1月を目処に
全社員の1割にあたる650人を
仕事が手中する部署に厚く
配置する。中途採用も拡大・・・」
と記事がでていましたね。
 
そんな付け焼き刃的対策では
抜本的な解決にはならない
のでは?と思います。
 
本当は、もっと要員自体を早く
手厚く増やす必要があるのでは
ないか?と私には見えます。
 
 電通は、世界的にも有名な
広告大手企業であるのですが
日本労働史上、不名誉な
ブラック企業の代表として、
名を残すだろうと予想します。

さらに「一罰百戒」という言葉があります。
政府が進める「働き方改革」のためにも
私の勝手な予想ではありますが、
 特に厚生労働省は電通を許さないはずです。

その証拠に、2016年12月28日に
厚生労働省東京労働局は、
労働基準法違反で電通と、
亡くなった高橋まつりさんの上司を
検察庁に書類送検しました。

            
2017年1月6日には塩崎厚生労働大臣から
電通への処分は社長の引責辞任だけでは
済ませないとも明言しましたので、
後日、社長が
逮捕されることもありえるでしょう。

【3.電通の異常残業の根源、鬼十則】

この会社の異常残業の根源は
以下のよう観念を持つ人間を
組織のトップとして戴いたこと
にある、と私は見ております。

それは、
(1)戦後の焼け野原から
死ねような思いで働いて
立ち上がった経験がある。
(2)高度経済成長期では
日本全体で当たり前だった
長時間労働に耐えることを
何とも思わない。
(3)それによって出世競争を
勝ち抜いた経験もある。
の3つです。

体がボロボロになるぐらい
頑張って働いたサラリーマンが
出世競争に勝って
社長に登り詰めるという
サクセスストーリーは
どこの会社でもあるでしょう。

電通の場合は、
それだけに留まりません。

出世競争を勝ち抜いた社長が
個人的な人生訓や暗黙知を
「鬼十則」という社内訓にして
文字化し、社員らにたたきこむ
ことを始めたことでした。
(「鬼十則」は1951年、
戦後の焼け野原から
立ち上がるべく国民が
必死に奮闘していた時期に、
当時の社長が作りました。)

「鬼十則」には長時間働け、
とは書かれてはおりません。
(具体的な文面は、ご自身で
ネット検索して下さいね。)

しかしながら、それを
遵守すべく頑張ると、
ノーマルな発想や仕事態度では
到底こなせないレベルの
内容が書かれています。

結果、鬼十則を守って働くと、
普通に仕事する人より遥かに
時間とロードを要することになり、
長時間労働につながったのです。

さらに、悪いことに
歴代の後任の社長らが、
「鬼十則」を金科玉条の
ごとく大切に守り続けて
社員らを洗脳し続けたのです。
(電通が社員に配る手帳に
印刷されているそうです)

そのことが、電通の労働環境を
厳しいまま放置した原因で
あろうと、私は思います。

電通では、1990年代にも
過労自殺があったことから
国に対して労働環境を変えると
約束したにも関わらず、
その時点では「鬼十則」
という異常残業の根源に
切り込みませんでした。

その原因は経営トップ層に
「要員はそんなに増やさず、
人件費はできるだけ抑え、
可能な限り会社の
利益を最大にしたい」
という本音があったからです。

収益をあげたいのは
どの企業も至上命題です。

しかしながら、
電通の「鬼十則」に
流れている哲学は、
社員の能力やモチベーション
を健全に向上させようという
正しい人材育成の思いから
完全に離れた視点に立っている
と、私にはそう感じられます。

電通社員に24時間
仕事のことを意識させ
「生かさず、殺さず」
「常時フルパワーで頑張れ」
という状態に導き、
経営側が、従業員を
「厳しい仕事を乗り越えること
こそ、一人前の電通社員だ。」
と洗脳し、支配したかった
のだろう、と私には見えます。

この哲学に、特に会社の
上層部が感染してしまうと、
もう部下は誰も異常残業に対し
異論を唱えなくなるはずです。

だからまた、過労自殺が起きたのです。
経営陣や上層部がダークサイドに
陥ってしまった会社。
それが電通であると思います。
ブラック企業との烙印を
押されても止むをえないでしょう。

高度経済成長時代の
1960年に記録した
年間2400時間を超える
異常な長時間労働が、
サラリーマンには当たり前だった
時代や状況下では、
給料が毎年ガンガンあがる
などの夢や希望がありました。
だから、まだ
何とか耐えられたと思います。

しかしながら、
デフレが定着した
21世紀の日本社会では
そんな夢や希望は持てません。

給料は下がりこそしても、
なかなか上がらない、
そんなご時世に
長時間働くことを前提にした
電通の「鬼十則」は
完全な時代錯誤の遺物であろうと
私には思えます。

【4.厚生労働省の本気度】

厚生労働省と労基署が行っている
かつてない大規模な一斉捜査は、
「一部上場企業にも拘らず
ブラック企業であったとは
何という体たらく!」
「過去にも過労自殺をだしていて、
何も改善されていないとは何事か!
電通よ、許さん!」という
怒りに満ちたメッセージを
日本国内の企業経営者らに
発信しています。

このメッセージは
特に国内主要企業の経営者を
心胆寒からしめました。

なぜなら、電通ほどではなくとも
私が今、勤務している会社も
多くの社員が長時間労働して
いると申して間違いありません。

私の会社の経営者層も
「当社に抜き打ちで労基署が
きたらどうしよう。」
「電通の社長がもし逮捕されたら、
次は自分かもしれないぞ。やばい。」
と、感じたに違いありません。

電通事件を契機に
日本のサラリーマンの
労働環境はどう変わるのでしょう?

 経済協力開発機構(OECD)の
加盟国中、日本の就業一時間あたりの
労働生産性が21位です。
GDPが世界3位の国とは
思えない低い順位です。

 生産性を革新的に変え、
長時間労働もきちんと
是正されるのでしょうか?

厚生労働省は、長時間労働に
厳しい歯止めや法的なルールを
制定する方向で動くでしょう。

労基署の監査官を増やしたりして
深夜残業などの取り締まりを強化
することになるでしょう。

では、特に中高年サラリーマンの
働き方はどうなるでしょう?

会社側は、残業するなとは
言わないまでも従業員には
一か月あたりの残業時間につき、
今以上に厳しい制限時間を
やはり設けるでしょう。

ですが会社側は、
その従業員に与えた
仕事量を変えようとしたり、
ノルマを下げることは
まずしないでしょう。
と、なるとどうなるか?

ここから先は
別の記事で掲載しましょう。
よろしければ、こちらをご覧下さい。
 https://miyanari-jun.jp/2018/05/29/new-lows-for-labor/

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