ようこそ、「(中高年)サラリーマンの松下村塾」へ

続・人類の未来がかかった米中間の覇権の争い ~チャイナが今、巻き返している~

油井秀樹さんから出された
2019年

「APT」

アメリカの
サイバーセキュリティーの
専門家たちが追跡し続けている
ハッカー集団に
つけられたコードネームだ。
「Advanced Persistent Threat=高度で持続的な脅威」
という意味の英文の頭文字を取っている。
多くは中国系で、
中国の国家機関と
つながりがあるとみられている。

サイバー空間での
米中の攻防は今、激しさを増している。
その最前線を追った。

約束を守らない国

「中国は約束を守っていない」

2018年4月、ホワイトハウスの一角で
トランプ政権のサイバーセキュリティーを統括する
ロブ・ジョイス大統領特別補佐官が
(現在はNSA=国家安全保障局の上級顧問)語気を強めた。

私はこの時、北朝鮮による
サイバー攻撃に関する
情報を聞くため取材を申し込んでいた。
そのインタビューの終了後、
ジョイス氏は突然、切り出した。
「脅威は北朝鮮だけではない。
中国からのサイバー攻撃が
再び激しくなっている」

ジョイス氏が
「中国が守っていない」と指摘した『約束』。
それは2015年の当時の
オバマ大統領と
習近平国家主席の会談で結ばれた。

当時、アメリカではすでに
中国によるサイバー攻撃で
大量の企業秘密が
流出しているという懸念が強まっていた。
これを受けて、
オバマ大統領から
対応を強く迫られた習主席は
「企業秘密を盗む目的での
サイバー攻撃はさせない」
と約束したのだ。

それから3年。
あるじがトランプ大統領に代わった
ホワイトハウスでは
中国への不満が再びうずまいていた。
「約束が守られてない」。
高官たちは口々にそう述べた。

(注:覚醒ナビゲーター・宮成から 
→チャイナ政府はこうした約束を
守るはずはありません。
なぜなら、ライバル国の
機密情報や技術を盗み出すことで
チャイナは高度成長を維持・継続
してきたからです。
知的財産盗用をやめれば、チャイナ経済は
成長をストップせざるを得ないからです。)

APT=高度で持続的な脅威

ワシントン近郊にある
情報セキュリティー企業「ファイア・アイ」。

アメリカ政府と密接に連携し、
世界各地で起きているサイバー攻撃を
24時間体制で監視している。

2018年12月、サイバー空間での
産業スパイ活動を調査する
特別チームを統括するベン・リード氏は、
取材に訪れた私に
最新の分析結果をまとめたグラフを指し示した。

「中国のハッカー集団が
企業秘密を盗み出す行為は
再び増加傾向に転じている」

「ファイア・アイ」では
これまでのハッキングの手口や習性、
標的の種別などのデータの分析から、
25を超える中国政府系とみられる
ハッカー集団の存在を特定していた。

「APT10」 「APT19」
「Group A」「Team.338」
これらのグループの一部は、
その技術の高さと
長期にわたる執ような攻撃、
そして、
その脅威の大きさから、
「APT:Advanced Persistent Threat
=高度で持続的な脅威」
と呼ばれていた。

リード氏はこれらのグループはいずれも、
この1、2年ほどの間に、
急速に活動を活発化させたと指摘した。

「グループによって多少の違いはあるが、
ハッカー集団の多くは
2015年の習近平国家主席の約束の後、
9か月から1年半くらいは
サイバー攻撃を控えていた。
攻撃の数が減少したのだ。
だがその後、再び活動を活発化させている」

増加に転じた要因を
リード氏は2点、指摘した。

1点目は政治環境の変化だ。
オバマ政権からトランプ政権に代わり、
アメリカ政府は中国を
「競合相手」と位置づけて貿易戦争を仕掛け、
その脅威を強調した。

対立が表面化するなか、
中国はもはや約束を守る
メリットはないと判断したという見方だ。

2点目は
中国国内の変化、
中国政府系のハッカー集団の組織再編だ。
習主席がアメリカと約束を交わした2015年、
中国政府は人民解放軍に
サイバー戦を担う「戦略支援部隊」を創設し、
大きな組織再編を進めていた。
中国政府内の指揮系統が整うまでの間、
組織だったサイバー攻撃には
着手できなかったというのだ。

これが整ったことで、
かつてよりも組織的、計画的に
サイバー攻撃が
展開されている可能性があるという。

そしてリード氏はこう警告した。

「中国政府系のハッカー集団の標的は
アメリカだけではない。日本を始め、
世界各地の政府・企業に対する
サイバー攻撃を増やしている」

明らかになった「脅威」

2018年12月20日。
アメリカ司法省のローゼンスタイン副長官、
FBIのレイ長官らが記者会見を開いた。

中国のハッカー集団
「APT10」のメンバー2人を
起訴したと発表したのだ。

「2人の中国人は
中国の情報機関と連携して
サイバー攻撃を仕掛けていた。
中国政府は
企業秘密を盗むための
サイバー攻撃をしないという
約束を守るつもりがないようだ」
(ローゼンスタイン副長官)

そして、ローゼンスタイン副長官は
「APT10」を背後で操ってきた
組織の存在を指摘した。
中国の情報機関「中国国家安全省」だ。

中国政府が関与した
官民一体となったサイバー犯罪だと強調したのだ。

朱華被告(左)と張士竜被告

起訴状によると
「APT10」のメンバーとして特定された
朱華被告と張士竜被告の2人は、
天津にある科学技術関連企業
「天津華盈海泰科技発展」に勤務しながら、
「中国国家安全省」の
地方機関「天津国家安全庁」と連携していた。

2016年から2018年にかけて
世界各地の企業・政府機関に対し
サイバー攻撃を仕掛け、
被害は、アメリカをはじめ、
日本、カナダ、ドイツ、
インド、ブラジルなど、
少なくとも12か国で確認されている。
標的にされた企業は
銀行、通信、電気製品、バイオテクノロジー、
自動車、エネルギーなど多岐にわたる。

被告の2人は中国にいるため逮捕はできず、
被害の全容は明らかになっていない。

だが、盗み出したデータは
アメリカだけでも数百ギガバイトに上り、
被害総額は計り知れないほど、
ばく大な金額になるという。

巧妙な手口

「APT10の手口は非常に巧妙だった」

手口の分析、解明にあたった
ボストン郊外にある情報セキュリティー企業
「カーボン・ブラック」の
トリスタン・モリス氏は、
その高度な技術に警鐘を鳴らす。

モリス氏によると
サイバー攻撃は
メールを標的に送ることから始まる。

メールにはウイルスが仕込まれた
ワードやエクセルのファイルが添付され、
文面や形式には
相手から怪しまれないように
非常に巧妙な細工が施されている。

APT10のウイルスは
マイクロソフト社の
「オフィス」の機能を悪用した
「マクロウイルス」と呼ばれるもので、
一般のウイルス対策ソフトでは
検知できなかったという。

そして、ひとたび
添付されたファイルを開いてしまうと、
コンピューターはウイルスに感染し、
APT10が遠隔で
コントロールできるようになっていた。

ただ、APT10は
直ちにデータを盗んだり
破壊したりすることはめったにしない。

覚知されないよう
静かに長期間潜行して、
じっくりとデータを
盗み出していったのだ。
このため被害にあったことすら
気がつかない企業も少なくなかったという。

モリス氏は
APT10が狙った標的の特徴も指摘した。

いずれもMSP=
マネージド・サービス・プロバイダー
と呼ばれる
インターネットの基幹的な事業者だったのだ。

MSPは各国の政府機関や企業と契約し、
ネットワークの保守管理を担い、
ネット上にデータを保存する
クラウドサービスや
セキュリティー対策の
ファイアウオールを提供している。

MSPのシステムは
そこから広がる
無数のネットワークの幹となっているのだ。

FBIに起訴された2人の中国人は、
まず、このMSPに不正に侵入。
そこを「玄関口」にしたうえで、
MSPの顧客の政府機関や
企業のネットワークに侵入し、
次から次へとデータを盗み取っていたのだ。

「この手口は
『クラウドホッパー作戦』と呼ばれている。
MSPを踏み台に
その顧客のネットワークに横から横へと移動する
『ホッピング』を繰り返して
大量のデータを盗んでいく。
効率的で画期的でもうけの多い手口でした」(モリス氏)

各企業のネットワークに
個別に侵入するのではなく、
基幹的なMSPのシステムに侵入することで、
顧客企業の情報を一括で根こそぎ盗み出す。

住宅一件一件に盗みに入るのではなく、
各家庭から
資産を預かっている
銀行をねらったかのような手口。
だからこそ
大量のデータの盗みだしに成功したのだろう。

深刻化する日本の被害

「APT10」による
サイバー攻撃の被害は、
日本にも広がっている。

攻撃が目立ち始めたのは2016年の後半。
その前年に
習近平国家主席は
アメリカと例の「約束」を結んでいた。

このため中国は、
いったんアメリカから、
日本などほかの国に
標的を移したのではないか
という見方がある。


「APT10」に関する分析報告書

「APT10」に関する
分析をまとめたBAEシステムスと
PwCの報告書によると
「APT10」は
日本の公的機関を装って
ウイルスを仕込んだメールを送り、
攻撃を仕掛けていた。

メールアドレスには
実在する日本の大学機関や政府機関に
似せたドメイン名が使われていた。

例えばその1つが「@mofa-go-jp.com」。
外務省の公式メールアドレスのドメイン名
「@mofa.go.jp」に酷似している。

そして、ウイルスを仕込んだ
添付ファイルには
送り先の業種などに合わせて
日本語で「県立大学シンポジウム」や
「日米拡大抑止協議」といった
専門的な内容のタイトルをつけ、
相手の関心をかきたてるような
工夫を凝らしていた。

二重の作戦

「APT10」の精巧で緻密な細工。

FBI=連邦捜査局の
エリック・オニール元捜査官は
その背景に
中国のハッカー集団の
周到な事前工作があると指摘する。
それが大量の個人情報の活用だ。

「多くのサイバー攻撃は
1通のメールから始まる。
大量の個人情報は
標的にあわせた
特別なメールを作るのに役立つ。
誰であろうと
いかにも怪しいメールであればクリックしないが、
例えばメールに
自分のパスポート番号や
友人の名前があれば、
クリックする可能性は高くなる。
個人情報はそのために大きな役割を果たす」

アメリカでは
2014年にOPM=連邦人事管理局が
サイバー攻撃を受け、
2000万人以上の政府職員などの情報が流出。
2018年にはアメリカ政府の職員や
企業の幹部がたびたび使用する
大手ホテルチェーン
「マリオットグループ」のサーバーが攻撃され、
最大で3億8300万人分の情報が盗まれた。
アメリカ政府はいずれも
中国のハッカー集団の犯行とみている。

オニール氏は
「アメリカ政府の職員をねらった
サイバー攻撃の準備の一環だった可能性がある」
と警告する。

中国の野望

サイバー攻撃が再び活発化した背景に何があるのか。

アメリカが指摘するのが
習近平政権の2つの国家戦略、
「中国製造2025」と「一帯一路」だ。

次世代通信規格5G、
AI=人工知能、航空宇宙産業、バイオテクノロジーなど
10項目の先端産業分野で
中国企業を世界のトップ水準に
育成する「中国製造2025」

ペンス副大統領は、
去年10月の演説で
「中国共産党は『中国製造2025』を通じ、
世界の最先端技術の90%を
掌中に収めることを目標としている。
中国の情報機関は
アメリカの技術を盗み出す
大規模な作戦を企ててきた」と指摘した。

アメリカ司法省の
ローゼンスタイン副長官も
「中国のハッカー集団に
ねらわれているアメリカ企業の多くは
『中国製造2025』で記された
先端産業の企業だ」と明かしている。

そして、
中国と世界各地を結ぶ地域で
インフラを整備し貿易を促進する
巨大経済圏構想「一帯一路」。

情報セキュリティー企業
「ファイア・アイ」は
2019年の年次報告書で次のように指摘した。

「中国の『一帯一路』構想こそが
サイバー攻撃の主要な原動力だと見ている。
サイバー攻撃で集めた
ビジネスに関連する情報が
『一帯一路』の取り組みを支えている」
(「ファイア・アイ」2019年年次報告書 )

アメリカを抜き、世界の覇権を勝ち取る。
野望の実現を目指す
中国政府とこれを支える民間のハッカー集団。
サイバー攻撃増加の背景に、
長年にわたり構築されてきた
官民一体の態勢が見え隠れする。

デジタル同盟

アメリカはどうやって
この事態に対抗しようとしているのか。

トランプ政権は
中国政府との貿易交渉で
この問題を取り上げているが
中国はサイバー攻撃を
否定し続けていると見られ、
行方は不透明だ。

このためトランプ政権は
同時に次の手を打ち始めている。
防御にとどまらず
相手のシステムに侵入し
破壊するサイバー攻撃能力の強化だ。

2018年5月、
アメリカ政府は新たに「サイバー軍」を設立。
9月には「国家サイバー戦略」を策定し、
報復攻撃を辞さない方針を打ち出した。

そして今、
トランプ政権が目指しているのが同盟国、
友好国とともに構築する「デジタル同盟」だ。

日本やヨーロッパの同盟国と
サイバー空間を防衛する態勢を築き、
中国による支配に対抗しようというのだ。

その一環として
アメリカが各国政府に求めているもの。
それが中国の通信機器大手
「ファーウェイ」や「ZTE」の
製品の使用禁止措置だ。

「サイバー空間は今後、5Gの時代に入る。
5Gは単に現在の4Gよりも
スピードが速いというレベルではなく
われわれの生活そのものを
大きく変える可能性がある。
家電や自動車などあらゆる製品が
インターネットとつながる
IOT化が実現するのだ」

トランプ政権の高官は
サイバーの世界に
大きな変革の時が来ると指摘したうえで、
次のように続けた。

「5Gを管理するものが
個人のすべてのデータを
リアルタイムで掌握する可能性が高い。
自由や民主主義、
そして人権という価値観を共有しない
一党独裁の中国にそのデータを
奪われるわけにはいかないのだ」

5Gのサイバー空間を制するものが、
経済そして世界を制する。
そういっても過言ではないという
高官の説明には、
中国への強い危機感がにじむ。

その言葉通りに
ペンス副大統領や
ポンペイオ国務長官はことし
ヨーロッパなどを外遊した際、
ファーウェイの脅威を強調した。
5Gの整備で中国製品を採用すれば、
機密情報の共有を制限する。
アメリカ政府が
こう同盟国に警告したとも伝えられている。

サイバー空間の支配をめぐる
米中の攻防は
日本や同盟国を巻き込む
「見えない戦争」の様相を呈しつつある。

以上が
NHKニュースウェブからの
引用でした。
ファーウェイやZTEの製品を
使うことの怖さもわかる
いい内容であると思います。


【2.アメリカ政府が激怒した孟晩舟の発言とは?】

ファーウェイの
孟晩舟副会長は
逮捕される3か月ほど前、
2018年9月に四川省での
講演会で以下のような
発言をしました。

「十年一剣を磨く。
5Gの世界標準を獲得した」と。

中国の専門誌によると、
次世代高速通信5G関連
特許に占めるファーウェイの
割合は29%でトップで、
ファーウェイ幹部は
「当社なしではオーストラリアの
5G構築コストは最大40%上昇する」た
とも豪語したそうです。

しかしながら、
私はこの発言こそが
アメリカ政府の耳に入り
虎の尾を踏んだと
考えております。

「5Gで世界標準をとられたら、
アメリカがチャイナに勝てなくなる。
いや、安全保障を含めて
チャイナに世界覇権を奪われる。
これは非常に危険だ」と、
アメリカは判断したのだろう
と思います。

この講演会の直後の
2018年10月4日に
ペンス副大統領が
「チャイナ=仮想敵国」だとする
宣戦布告ともいうべき
歴史的演説が行われたことや、

この方針演説から
2か月たたない2018年12月1日に
孟晩舟副会長が逮捕されたことから
アメリカの激怒ぶりは明らかです。

この逮捕を受けて日本政府も
ファーウェイやZTE製品を
排除する方針を打ち出しました。

同時期に
ファイブ・アイズといわれる
カナダ、オーストラリア・イギリス
そしてニュージーランドも
アメリカの方針に従い
ファーウェイ製品を
排除することを表明しました。

こうしてデジタル同盟、
すなわち「チャイナ包囲網」が
世界に広がるか、と思えましたが
そう簡単ではないのです。

現状ではむしろ、
チャイナ包囲網が
崩れかかっていることを
これからお伝えします。

【3.ファーウェイは通信基地局で世界シェアトップ】

孟・副会長が
5Gの世界標準をとったと
豪語したのは
特許の割合だけでなく、
ファーウェイ製品のシェアでも
世界のトップシェアを握ったからです。

2018年12月12日付の
産経新聞の記事では
ファーウェイ、通信基地局で世界首位」
と報道されました。

華為技術(ファーウェイ)は
世界170カ国・地域で
事業を展開しています。
主力の通信基地局では
世界首位のシェアを誇ります。

基地局は携帯電話やネットの
肝というべき情報インフラです。
ファーウェイはその分野で
遂に首位にのし上がったのです。

ファーウェイの2017年の
売上高は約9兆9千億円。
基地局のほかスマートフォンでも強く、
18年7~9月期は出荷台数で
韓国サムスン電子に次ぐ
2位につけて米アップルを超えました。

日本では2005年に
ファーウェイ・ジャパンを設立。
2017年、
新卒初任給40万円の求人を出したことで
話題となりました。

同社の基地局は、
他社に比べて安い上に
性能も向上しているとされています。
同社によると、
次世代の第5世代(5G)移動通信方式では
すでに1万台以上の基地局を
世界に出荷しているといいます。

実は、EUにも
すでにファーウェイが
深く食い込んでいるという
事実をお伝えします。


【4.各国がファーウェイ排除に消極的な理由とは】

以下は、2019年3月14日付の
AFP通信報道からの引用です。

「中国の通信機器大手、
華為技術(ファーウェイ)をめぐり、
米国が欧州諸国に対して、
同社を第5世代(5G)移動通信網構築への
参入から排除するよう圧力を強めている。

米欧州軍の
カーティス・スカパロッティ司令官は
3月13日、ドイツが
ファーウェイの技術を採用した場合には、
ドイツ軍との通信を断つ方針を示しました。」

米国と欧州の同盟国は、
中国政府と
緊密な関係にあるファーウェイは
安全保障上のリスクをもたらすと懸念し、
5G通信網構築の入札から
2018年12月以降は
ファーウェイを排除する流れに
なりつつありました。

ところが、2019年2月ぐらいから
そうした流れにブレーキが
かかるようになってきたのです。

記事の引用を続けます。

「北大西洋条約機構(NATO)軍
最高司令官を兼務する
スカパロッティ氏は
13日の米下院軍事委員会で、
ドイツを念頭に置いた
欧州との貿易交渉に関する質問を受け、
「特に5Gについて、周波数帯域幅の
情報処理能力や性能は途方もない
という点で、電気通信の根幹に関わる」
と懸念を示し、防衛通信網内に
そうした危険が存在する国とは
通信しない考えだと述べました。」

以上がAFP通信の記事内容です。

アメリカがこのような
警告を発する理由は
ドイツが、ファーウェイの
危険性を理解しているのですが
ファーウェイを排除することに
消極的だからなのです。

ではなぜ、消極的なのか?
その答えが2019年3月30日放送の
ABC朝日放送のTV「正義のミカタ」
で示されていました。

実は、
ドイツ国内には7万数千機に及ぶ
通信基地局が存在していますが、
その半分がファーウェイ製なのです。

つまり、ドイツには
ファーウェイがすでに
根深く食い込んでいて、
これをすべて排除して
別のメーカーに切り替えるには
莫大な費用と時間を要するので
それをやりたくないからです。

ドイツをはじめとして
EU諸国の中にも
相当程度ファーウェイが
入り込んでいるので、
アメリカ軍は近い将来
自国の軍事機密や
最先端軍事技術を
ファーウェイ経由で
チャイナに盗まれないよう
NATOから「脱退」することも
ありえるかもしれません。

実際にアメリカが激怒し、
本気でNATOから脱退しようと
考えさせるようなニュースが
3月26日にEUから流れました。

以下、日経新聞から引用します。
「欧州連合(EU)の欧州委員会は26日、
EU域内で整備する次世代通信規格
「5G」を巡って、中国通信機器大手、
華為技術(ファーウェイ)など
中国企業の製品を採用するかの判断を
加盟国に委ねる「勧告」を公表した。
米国は欧州に同社製品の排除を求めていたが、
EUとして一律で除外するのは見送り、
5Gのセキュリティー問題の
監視強化に向けて加盟国間の連携を求めた。

勧告では6月末までに
5Gのセキュリティー上のリスク評価を
終えるよう加盟国に要請。
中国企業を念頭に、
5Gに製品を採用した場合の
安全保障上の脅威を見極め、
EUレベルで情報共有する。
そのうえで12月末までに
EUと加盟国がそれぞれ対応する
セキュリティー強化策での合意を目指す。
勧告には法的な拘束力はない。

中国企業の締め出しを求めていた
米国とは一線を引いた格好で、
トランプ政権の反発も予想される。

米政府は欧州各国が
ファーウェイ製品を採用すれば米欧間の
軍事・機密情報の共有などが
損なわれるとけん制している。

5Gを巡っては、欧州でも
ファーウェイなど中国製品を採用した場合の
個人データや機密情報の漏洩への懸念が広がる。
欧州委は3月12日公表した
対中戦略を見直す行動計画案で、
5Gへの外国製品の使用は
「EUの安全保障を危機にさらすリスクがある」
と警鐘を鳴らしていた。」

以上が日経新聞の引用です。

5Gに関して、
EUが
チャイナ排除に
足並みが
そろっていない
ことが判明したのです。

EUからファーウェイ製品が
排除されなければ、アメリカは
情報提供を遮断するだけでなく、
自国の機密や軍事技術を守るため
近い将来本当にNATOから
脱退するかもしれません。

さらに、ドイツより少し前に
アメリカの最重要同盟国、
イギリスまでも
アメリカが提唱する
チャイナ包囲網(デジタル同盟)に
「反旗」を翻しました。

2月17日、イギリスの
国家サイバーセキュリティーセンターが、
ファーウェイについて
利用を一部制限すべき領域はあるが
「安全保障上のリスクは抑えられる」
との判断を固めた、と
報じられたからです。

ブレグジットによる経済減速が
強く懸念されるイギリスでは
チャイナマネー流入を歓迎し、
それとセットになって
安く高性能の通信基地局を
提供してくれるファーウェイを
排除したくない本音があります。
そこにチャイナ政府の
一帯一路をEU市場で実現させたい
との野望が、つまり両国の利害が
一致する形になろうとしています。

さらには、自由主義陣営で
経済大国になろうとしている
人口10億人のインドまでも
ファーウェイを排除しない
方針になるかもしれないと
言われています。

EUで5億人、インドで10億人
この巨大な両市場が
ファーウェイを排除してくれれば
アメリカや日本を含めて
地球人口の過半数が
アメリカ型の非ファーウェイ圏となります。

しかしながら、EUとインドが
ファーウェイを排除しないと
地球上の過半数以上の人類が
チャイナ陣営につくことになり
日本やアメリカが不利な立場や
狭いマーケットに押し込まれる

可能性があるのです。

実際、
ファーウェイの5Gの技術は
欧米企業の技術よりも
1年程度進んでいるといわれています。

理由は、
中国式規格の「FDD方式」が
欧米流の規格「TDD方式」より
通信速度が速いから、と
言われているためです。
そのうえ価格も安いのが利点です。

そのため、各国にファーウェイの
製品や基地局が広がっているのです。

私は、ここに
非常に狡猾なチャイナ政府の
国家戦略がみてとれます。

ファーウェイなしでは
5Gが成り立たないよう
世界各国から盗んだ技術で
高度なハイテク製品を作り
それを安く広く供給します。

そうすることで
世界各国の通信インフラを握り、
各国の安全保障の急所まで
からめとろうする戦略です。

安全保障や機密までも
ファーウェイ機器によって
筒抜けになると
その国は完全にチャイナに支配され
属国に転落します。非常に危険です。

【5.EUにつけこんで対中包囲網を崩そうとする習近平】

2019年3月、チャイナの
習近平国家主席が
ヨーロッパを訪問し、
EU首脳とも話し合いました。

彼の狙いは
米中貿易戦争で追い込まれている
現状を打開し、
チャイナ経済の活路を見出すべく、
ブレグジットなどで今
景気後退しつつある
EUにつけこみ、
アメリカに対抗することを
考えたからでしょう。

その意味では習近平は
「したたか」で
大した戦略家だと思います。

そのやり方は
「一帯一路」政策を掲げて
EU各国にはチャイナマネーにて
インフラ投資の費用を出すと
(空手形で)約束します。

(ちなみに、一帯一路の
もう一つの目的は
チャイナ国内で生産し、大量に
余っている粗悪な製鉄製品や
石炭などを売りさばくことに
あります。)

チャイナ政府は今、
外貨も減って対外援助資金が
そんなにないはずですが、
そのことを隠して
調子のよいことをEU各国に
宣伝している可能性が高いのです。

さらには
政府のトップ同士の交渉で
ビッグビジネスを成立せることで
EU全体をチャイナになびかせ
アメリカによる
「チャイナ包囲網」を崩して
何とか活路を見出そうという
本音が見え見えでした。

EUの欧州委員会は
チャイナへの警戒感を
一応、あらわにしていました。

アメリカのペンス副大統領が
警告している通り、
「一帯一路」は
借金漬け外交による経済侵略という
「猛毒」が含まれていることを
喝破しており、それを
EU首脳もわかっているからです。
(以下は、チャイナから資金を
借り入れたものの、借金のカタに
世界各国がとられてしまった港湾
などの一覧リストです。)

以下、2019年3月22日付の
日経新聞の記事から引用しますね。

「欧州連合(EU)は22日の首脳会議で、
対中国戦略の練り直しを協議した。
中国の欧州接近がEUの分断を
招きかねないとの警戒感がにじむ。
習近平国家主席の訪問に合わせて、
イタリアは主要7カ国(G7)で初めて
中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」を
巡る覚書に署名する予定。
中国マネーの欧州流入に対抗し、
EUは中国へ
市場開放の圧力を高めていく構えだ。」

 

(写真はイタリアのマッタレッラ大統領
(右から2人目)と記念写真を撮る
中国の習近平国家主席(同3人目)=AP)

「「中国は競合相手だ」。
ユンケル欧州委員長は記者会見で、
中国への警戒感をあらわにした。
今回の首脳会議では
対中関係の抜本見直しを協議。
会議後に採択した総括文書は
中国を直接名指しする表現は少なかったが、
いたるところで中国への警戒がにじんだ。
柱の一つが、公共調達市場での
「相互性」の強化だ。
総括文書では欧州企業の
公共インフラ市場への
参入を制限している国には、
その国出身の企業が
EU域内の政府機関による
入札に参加する場合、
差別を容認する仕組みを
検討すると明記した。
国名は直接出てこないものの、
「もちろん中国が念頭にある」(EU外交筋)。

EU域内への域外企業の参入は
原則自由としている一方で、
EU企業が中国の公共インフラ市場への
入札を阻まれていることに、
EU側では不満が募っていた。

首脳会議に先立ち、
欧州委員会は3月12日、
中国を「競合相手」と
位置づける新戦略を公表。
通商や次世代テクノロジーの
主導権争いで急速に存在感を強める
中国へ対抗心を示していた。
背景にはEU中核国の
イタリアまでもが中国マネーに
なびいたことへのEUの衝撃がある。
対中圧力を高め、
EUの求心力を立て直す狙いが透ける。

中国側は
「敵対的な競争はだれの利益にもならない。
EUには客観的、理性的、公正に
中国の発展と新たな改革開放をみてもらいたい」
(中国外務省の陸慷報道局長)と反論する。

米国との貿易戦争が続くなかで、
G7のイタリアを
一帯一路に引き込んだことは、

中国にとって大きな外交成果だ。
習主席はイタリア紙への寄稿で
「中国は対外開放を拡大する。
イタリアを含む世界の各国と
中国市場のチャンスを
分かち合いたい」と指摘し、
ほかの国にも一帯一路に
参加するように呼びかけた。」

以上が日経新聞からの引用です。

2018年には
マレーシアやパキスタンで
チャイナの邪悪な意図を見破って
「一帯一路」に紐付いた
チャイナからの
経済援助やインフラ整備事業は
ことごとくアジア方面では
破棄されてきました。

(2018年10月12日付け 日経新聞より)

そこで習近平は
アメリカに対抗することと併せて
ヨーロッパで
一帯一路を復活させようと
目論んだのですね。

これに対し、EUの首脳は確かに
チャイナの下心を見抜いて
2019年3月上旬には
警戒警報を出していました。

しかしながら、
EU委員会に
国家の財政政策を運用する
フリーハンドや権限を奪われ、
緊縮財政を余儀なくされていた
経済力が弱いEU内の各国では
特に、
ソ連が属国化していた
かつての旧東ヨーロッパ諸国では
貧しい国が多いため、
インフラ投資を提案する
チャイナ政府の「一帯一路」政策を
非常に魅力的に感じたのでしょう。

そこに、経済的に停滞し
「反EU」になびいていた
経済大国イタリア(世界第7位)
までもが共鳴したのです。

EU委員会の首脳陣が警戒感を
公表したにもかかわらず、
イタリア含めて何と
24か国もの国がもろ手をあげて
一帯一路に賛成の意を示し
今回、署名しました。

チャイナ政府からのインフラ投資は
借金を返せない場合、
その国の重要な港湾や土地などが
チャイナに差し押さえられ、
経済的に侵略されるという
「猛毒」が含まれているのに、です。

要するに目先のお金、
チャイナマネーに
EU諸国は危ないとわかっていても
目がくらんだのですね。

誠に愚かで残念なことです。

チャイナによる
知的財産の侵害や技術盗用を
強く警戒していた
フランスのマクロン大統領ですら、
習近平から
フランスのエアバスを300機も
大量に購入してもらえるとなった途端、
習近平に融和姿勢をみせたほどです。

要するに、昨年の秋以降
フランス国内では
高い失業率や、若い人たちの不満で
暴動が今も頻繁に起きており、
マクロン大統領への支持率や
政治基盤が弱体化しているところを
習近平は
「大きな商談獲得→国内景気がよくなる
→若者が雇用される→支持率回復へ」
という餌をちらつかせ、
フランスの弱点を巧みについたのですね。

習近平の高笑いが聞こえてきそうです。

このことは、
アメリカから見ると大きな誤算です。

チャイナを米中貿易戦争で
経済的に追い込んでも
EU市場をチャイナに押さえられ、
チャイナが経済的に復活したり、
EUまでもが
「親中反米」になってしまうことは
避けたいのが本音です。

しかしながら、
2019年3月の
習近平の欧州訪問によって
2018年12月以降
アメリカに押され気味だった
チャイナが巻き返しつつある
情勢になろうとしています。

【6.今後のアメリカの反撃はいかに?】

このように
ファーウェイの5G技術の
世界各国への浸透と、
習近平国家主席が
直接、EU各国に出向き
「一帯一路」政策による
チャイナマネーのバラまきという
反撃があったことで、
アメリカが提唱した
「対中包囲網」(デジタル同盟)が
今や切り崩されて、
決してアメリカ優位とも
言いづらい状況にあります。

しかし、アメリカは
自国の覇権を決してチャイナに
渡すことをよし、とはしません。

絶対に負けないだけの
作戦や手を打つはずです。
(最終手段として、対中関税比率を
25%のMAXに引き上げてしまう
ことも考慮しているでしょう。)

それは過去の100年余りの
アメリカの歴史をみれば明らかです。
アメリカは過去、覇権争いで
対抗してきた相手国(日本とソ連)
最終的には力でねじ伏せましたから。

かつて、
チャイナ市場の覇権をめぐって
日本と争った時には
大規模な戦争まで行って
日本に原子爆弾まで落として
我が国を破壊・占領しました。

20世紀後半、
アメリカがソ連を軍拡競争で
崩壊に追い込んだ時には
核戦争というには至らず、
ソ連はゴルバチョフ大統領の下で
平和裏に分解・滅亡しました。

今度のチャイナの場合は、
ゴルバチョフ大統領に相当する
自由主義陣営とも
腹を割って話ができる
理性のある優れた人物が今いないため、
アメリカと最悪、軍事衝突する
危険性も私はあるとみております。

実際に南シナ海では
いざという時に備えて
軍事衝突に備えることを
アメリカ軍は怠っていません。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190329-00055932-jbpressz-int&fbclid=IwAR0dq1_VIexWtvFBjHIzAmq47Tlt6fVKM2U4n6vM8xLSNV1TtrT231lUM6o



2018年9月末にも、この海域で
チャイナの人民解放軍の艦船と
米軍の駆逐艦が
あわや衝突しそうになるという
ニヤミス事件もあるなど、
この海域は一触即発です。

ウイグルやチベットで行われている
チャイナ政府による
おぞましい人権弾圧についても
アメリカは今後機会あるごとに
世界各国に訴え続けるでしょう。


それだけでなく、
チャイナではキリスト教への
弾圧と支配を強めていることも
事実としてあります。
(バチカンから派遣された
司教を配置せずに、共産党に
忠誠を誓った共産党員司教を
チャイナ国内の教会に配属する
人事を行っているのです。)

アメリカのような
アングロサクソン系の国々は
キリスト教を弾圧する
動きを特に警戒します。

つまり、
チャイナを放置すると、
領土拡大・侵略のみならず
人権や宗教弾圧までも
必ず行われるということが
わかってきたので
これを防ぐ必要があると
訴え続けることになるでしょう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190318-00010000-jindepth-int&fbclid=IwAR1PnjisSTsStwQkDAGr-W052LMJ_2veviL6Z2nM42RSgku2Bb3u3fNjswA

さらには、ファーウェイの
孟・副会長をどう裁くのか。

ファーウェイがやろうとしている
恐るべき人類支配計画の全貌
(各国の安全保障を5Gで完全に
抑え込んで属国にしてしまう)
を、どう証拠をつかんで
全世界に公表するのか?

貿易構造協議が4月にまで
ずれ込む中で、米中両国が
どう話し合いを決着させるのか?

特に知的財産侵害の部分は
アメリカは絶対に妥協せず
厳しく監視するルールと
破った場合の制裁措置を
強く求めるでしょうし、
一方のチャイナは、技術盗用を
やめてしまうと国家の発展基盤を
失うので、続けたいのが本音です。

この点で
両国が折り合うことは
双方の国家メンツと覇権が
かかっているので
非常に難しいはずです。

折り合いがつかねば
最悪の場合、戦争になります。
これは歴史が証明しています。
(1940年代の日米の対立がそうでした)

今やっている
関税を引き上げによる貿易戦争も
過去の(特に日米の)歴史を見れば、
本当の戦争になる
一歩手前の状況とも言えるからです。

これらのことはまだ流動的で
どうなるか、目が離せません。

加えて両国は今、水面下で激しく
ぶつかりあっているはずです。
冒頭で述べたように
目に見えないところで
サイバー「戦争」も
日々繰り広げられているはずです。

要するに、
今両国がやっていることは
第二次大戦後、
アメリカが作った民主主義型の
覇権ルール・自由をベースとした価値観
に対して、
チャイナが打ち立てようとする
独裁・強権型の
チャイナ主導ルール、自由を圧殺した価値観
のどちらが勝って、
今後の地球と人類の未来を握るのか、という
「文明の衝突」「覇権争い」なのです。

覇権を握っている大国と
それに挑戦するナンバー2の国が
直接的に軍事衝突したことは、
世界史を振り返ると
過去、何度かありましたので
米中が、実際に
軍事衝突する可能性が
今後ありうることを、
私たちは知っておかねばなりません。

そうした複数の動き・情報が
4月以降あらたに表面化し、
結論や趨勢が明らかになるはずです。

その全貌がわかったところで
人類の運命も
「光」の方向にいくのか?
逆にチャイナが優勢となって
「闇」の方向にいくのか?
がわかるようになると思います。

そのあたりが、
世界情勢の裏情報がまたわかり次第、
こうして報告したいと思います。

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